仏教の伝来とともに日本に伝わったとされる香ですが、その中でも焼香は御仏が住まわれる浄土の世界に漂う香りとされます。またこの特別な香りが隅々まで届くことによって、すべての人に平等に仏の慈悲が与えられるとも言われています。
そんな焼香は宗派によって作法が異なり、仏教であればどの葬儀でも同じとは限りません。例えば日蓮宗や真言宗では3回つまんで額に押しいただきますが、浄土宗は自分の身を清めるためにおこなうため、額に押しいただくことをしないのが特徴です。
焼香では様々な香料を細かく刻んだ抹香が用いられ、火種となるいこした炭が置かれた香炉に静かにくべます。このとき右手の親指と人差し指、中指でつまんだ抹香を目より高い部分まで持ち上げ、額に近づけるように掲げることを「額に押しいただく」と言います。
このとき香炉に抹香をくべる前に額に押しいただくのが礼儀で、真言宗や日蓮宗などでは最初の1回だけを額に押しいただくこともあれば、3回とも額に押しいただいてもかまいません。また曹洞宗では2回と定められているため、葬儀に参列する場合は宗派によるしきたりを知っておくことが大切です。
手順としてはまず香炉台の前に進み、少し手前の位置で遺族に対して一礼します。そして香炉台の前でも一礼を捧げ、左手に数珠をかけて右手で抹香をつまんで額に押しいただきます。抹香を静かに香炉にくべたら合掌し、また静かに少しだけ下がって遺族に一礼後、席に戻るのが正しい作法です。